これから年末に向かうと、各企業ではお歳暮を贈り合う時期が訪れます。
とはいえ昨今では虚礼廃止の考え方からでも、お中元やお歳暮は贈らないという企業も増えてきたようです。
しかし、自社がお歳暮は贈らない、もしくは受け取ってはいけないと決められていた場合でも、下請け企業などからお歳暮を贈られた時はどうしたら良いのでしょう?
この記事では、そのような下請けなどからお歳暮を贈られた場合の対処法について、ビジネスマナーを踏まえてご紹介してまいります。
下請け企業から贈られたお歳暮のお返しは必要ない
下請け企業からお歳暮を贈られた時、そのお返しはどうしたら良いのか?
社会人の方であれば1度や2度はこのような疑問を持ったこともあるのではないでしょうか。
結論から言えば、お歳暮をいただいたからといって、必ずお返しをしなければいけないというわけではありません。
これは、そもそもお歳暮というものの意味を考えていただけるとお分かりいただけると思います。
お歳暮の由来
お歳暮とは本来、1年の終わりにその年にお世話になった相手に対して、お礼に回る(歳暮周り)際に持参する贈答品のことを指していました。
そのためお歳暮とは、あくまでも「贈る」ものであって、「お返し」という概念はありません。
しかしそうはいってもいただいたお歳暮に対してお礼を返したいと思うこともあるかもしれません。
そういった場合は、お歳暮とは「贈り合う」ものだということを理解して、「返す」ではなくこちらからも「贈る」ということを意識するようにしましょう。
お歳暮のお返しをする際のビジネスマナー
それでは実際、下請け企業などからいただいたお歳暮に、お返しのお歳暮を贈る場合のビジネスマナーについて詳しく見ていきましょう。
お返しの時期
お歳暮を贈るのにふさわしいとされているのは、地域によって多少の差はあるものの、おおむね12月の初旬から20日くらいまでが最適とされています。
特に昨今のビジネスシーンでは、他社に先駆けて贈るという傾向に流れているためか、だんだん時期が早まって、11月の終わりごろから贈る場合も増えているようです。
とはいえ、いただいたお歳暮へのお返しとして贈る場合には、時期的には出遅れてしまうのは致し方ありません。
かといって下請け企業へ贈る場合は、年の瀬が迫ると先方も業務が忙しくなったり、仕事納めの関係もありますので、お歳暮を受け取ったらすぐにこちらからのお歳暮を手配し、遅くともクリスマスまでには届くようにするのが良いでしょう。
相手からお歳暮が届くの自体が遅く、クリスマスまでにこちらからのお歳暮が間に合わない場合は、年が明けてから改めて、お年賀として贈答品を送るのも1つのやり方です。
なお、お年賀は松の内と呼ばれる時期(関東では1月7日、関西では1月15日まで)に贈るものとされています。
万が一その時期にも贈れない場合は、寒中見舞いとするのがマナーです。
適した値段
通常のお歳暮の相場金額は、3,000円~5,000円といったところですので、この範囲内で贈り合うのが一般的です。
しかし、相手からいただいたお歳暮の額が、あまりにも相場をかけ離れて高価なものであった場合、相手に対して引け目を感じてしまうようであれば、できれば同程度の金額のものを贈るのが無難でしょう。
ふさわしい品物
通常企業から企業へ贈るお歳暮は、個別包装された菓子類やジュースのようなものが、先方の従業員たちで分けることもできておすすめです。
ただし、お歳暮をいただいた下請け企業が、個人経営で自宅と事務所が一緒になったような企業の場合であれば、正月に使う生鮮物などを贈るというのも選択肢の1つ。
ただしその場合は、あえて大晦日ギリギリに届くようにするほうが親切となります。
お歳暮の受け取りを断る場合のビジネスマナー
下請け企業からお歳暮を贈られた場合でも、会社規定でお歳暮などの金品を受け取ることが禁止されている場合、その受け取りには慎重になる必要があります。
特に、下請け企業から会社宛ではなく個人宅に贈られたお歳暮の場合は、取り扱いを間違えると会社から収賄と取られてしまうこともありえますので、丁寧なお礼状と共に送り返すのが無難です。
お歳暮のお返しはお礼状や電話・メールで大丈夫
下請け企業からお歳暮を贈られ、お返しとしてこちらからお歳暮を贈らない場合でも、しっかりとお礼だけはするのが最低限のマナーです。
これはお歳暮のお礼というのは、無事に品物が届いたということを先方に知らせる役目も持っているためで、受け取ったらすぐに電話やメールなど、どのような形でも構いませんのでアクションを起こすようにしましょう。
ビジネスシーンでのお礼状の書き方
お礼を伝える方法は電話やメールでも構いませんが、相手に感謝と敬意の念を伝えるにはやはり手紙がふさわしいでしょう。
ただし、はがきでのお礼状は不特定多数の人に文面が丸見えになるということを考慮して、誰かに見られても差し支えのない内容にとどめておくことが必要です。
その点を踏まえても、ビジネスシーンでのお礼状としてもっとも礼儀正しく正式なのは、やはり縦書きの封書で送る方法と言えます。
お歳暮のお礼状の内容
1.頭語
「謹啓」「拝啓」など手紙の最初に書く言葉で、相手への敬意を表すための言葉です。
すべて締めの「結語」と対になります。
2.時候の挨拶
季節を表すあいさつの言葉で、相手の安否を尋ねるあいさつと合わせて使うことで、格式高い文章となります。
3.お礼の言葉
いただいたお歳暮に対するお礼の言葉です。
送ってくれた相手の気持ちに寄り添うように、失礼のない形でできる限り丁寧に、かつ簡潔に書くようにします。
また、会社宛に贈られたのか、個人宛に贈られたのかにより「社員ともども(家族ともども)大変喜んでおります」などの言葉を添えるのも良いでしょう。
なお、もしもお歳暮の受け取りをお断りする場合は、これに次いでその旨を丁寧に書くようにします。
4.先方の健康を気遣う言葉
文末の言葉の前には相手の健康を気遣う言葉を書いて、手紙の構成を引き締めます。
お歳暮の時期は年末となるため、寒さが厳しく、また年末年始の慌ただしさが増してくる頃でもありますので、それを踏まえた内容とするのが一般的です。
5.結語
頭語と対になる締めの言葉です。
これはすべて組み合わせが決まっているため、ちぐはぐな頭語と結語を組み合わせないように注意します。
頭語と結語の使用例
- 拝啓~敬具
- 拝呈~敬白
- 謹啓~謹言
- 謹呈~謹白
- 一筆申し上げます~かしこ(主として女性が差出人の場合のみ使用)
お礼状の例文
拝啓
師走の候、貴社におかれましては、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
さて、この度はご丁寧なお歳暮を贈りいただき、誠にありがとうございました。
早速社員一同おいしくいただきました。
寒さはこれからが本番でございますが、皆様どうぞご自愛くださいませ。
略儀ながら、書中をもちまして御礼申し上げます。
敬具
令和◯年◯月◯日
◯◯株式会社
(役職)◯◯
株式会社◯◯
(役職)◯◯ 様
お礼状の注意点
下請け企業から贈られたお歳暮に対してのお礼となりますので、あまりへりくだった表現になりすぎるとかえって先方に気を遣わせてしまうことにもなります。
あくまでもこちらが仕事を発注している立場であることも踏まえて、発注中の仕事がある場合などは「年末でお忙しい」などの表現は避けるのもポイントです。
まとめ
下請け企業からお歳暮を贈られた場合の対処方法について
- お返しをこちらもお歳暮として贈る
- 電話やメールでお礼を伝える
- お礼状を出す
という3つの方法の、それぞれ状況に応じた使い分けについてご紹介してきました。
大切なのはお歳暮とはあくまでも、1年の感謝を表すための贈答品だと理解することで、おざなりなお返しなどかえって失礼なものです。
また、お礼状を送る場合でも、時節柄年賀状についでのようにお礼の言葉を添えるなど大変失礼なふるまいとなります。
お歳暮のお礼と、1年の始まりの挨拶状である年賀状はまったく別のものであると肝に銘じ、年賀状は年賀状でしっかりと準備するようにしましょう。
特に中小企業などの下請け企業とのお付き合いの上では、大切な人と人とのコミュニケーションを踏まえた時候の挨拶は、ビジネスマナーの観点からも大切にしたいものです。